アイコのまんが絵日記 

社会復帰して10年目の統合失調症患者の思い出や日々の戯言を漫画やイラストで表現するブログです。※はてなブログに引っ越しました!

僕が恋した偽物の君に【創作小説】

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戸野優希という男。

質のいいスーツから伸びる脚のシルエットの美しさ。長身っていいわね、不細工でもそこそこかっこよく見えるもの。と思っていたら、振り返った端正な顔立ちに思わずドキッとしたけど、ダメよ、美羽。これから一世一代の名演技を披露しなければいけないのだから。
「優希さん。夕食の支度が整いましたよ。たまにはご一緒いただきたいわ。」
ぎょっ、とした顔で、凝視してくる眼差しが痛い。
そりゃ、そうよね、私たち、はじめましてだもの。
「君は・・・?」
「・・・輝山姫子でございます。あなたの婚約者です。」
うまく、言えたかしら。
ああ、この空白の時間がツライ!!

つかつかつか、と突然の沈黙を破って、戸野優希が距離を詰めてきたかと思えば、
ガッ、と肩を掴まれていた。
「そっちがその気なら、こちらも遠慮しない。」
そして、端正な唇が、ぐいっと触れたのだ。
「嫌っ!」
バシンッ!!
気がつくと頰を引っ叩いていた。
「あ・・・。」
そして、青ざめる。すると、引っ叩かれた側の青年がふっと笑う。
「おてんばだな。そして、演技が下手だ。4人目の輝山姫子は・・・。」
「え?・・・4人目?」
どういうことなの!?



青天の霹靂。
勉強なんて嫌いよ、でも今回のことを表現するには、その言葉がぴったりだったはず。

まず、お祖父様が逝去なされたの。突然のことだったわ。
やり手の成り上がりだって、コソコソ噂されたこともあるわ。もちろんそんな不遜な口を叩く輩はやっつけてやったけど、子どもがそういう話をするってことは要するに、大人が言ってるってこと。まあ、少し強引な買収で恨みも買っていたようだから、仕方なかったのかしら。それでもね、お祖父様のいるうちは、安泰だったの。

問題はそう、お父様なの。優しくて大好きなお父様!でも、優しすぎて騙されやすいお父様。あっという間に身ぐるみ剥がされたという・・・・。
「美羽、もうこの屋敷も、美羽のきている服でさえも、何一つもはや、うちの物ではないのだよ。戸野家に差し押さえられているのだ。」
「冗談でしょう?」
いいや、とお父様は首を横に降る。
「この状況を脱する方法はただ一つ、戸野家の長男と結婚するのだ。」
「嫌よ!時代錯誤な!」
女子校育ちで、まだ恋を知らない身で結婚とか考えられない。
「と、仰ると思いました。本気の結婚ではなく、ご結婚のフリをなさればよろしいのでございます、アドモアゼル。」
突然降ってきた声の方に顔を向けると、見たことのないスーツの青年がいた。
「誰?」
「失敬。私、戸野家の執事をしております、田中でございます。」
にっこりと笑う笑顔が怖いぞ、田中。
「フリ、とはどういうことかね?田中さん。」
動揺するお父様の言葉に、にっこりと答え始める。
「戸野家の婚約者には『輝山姫子』様という立派な方がおられたのでございますが、ご失踪なされまして、」
「え、事件か何か?」
事件には巻き込まれたくない。
「いえいえ。どこの馬の骨とも知らぬ者と駆け落ちされたのです。ま、それも、戸野家にしてみれば、事件なのですが。」
あらー・・・。
「しかしながら、戸野家の婚約者に相応しいのは、輝山家のご令嬢となりますので、輝山姫子様に、成り代わっていただきたいのでございます、アドモアゼル。」
「・・・は?」
にっこりと田中が笑う。
「今夜から、あなたは輝山姫子です!偶然ですが、容姿がそっくりなのです。ご長男の優希様も、すっかり騙されることでしょう!」
ちょっとまて、田中!
「騙す、ってどういうこと?本人は知らないってこと?」
「周りがあなたを輝山姫子として扱うのを見れば、容姿のそっくりさも相まって、優希様も姫子様だと思い込むようになるでしょう!大丈夫です!うまくいきます!あなたは、輝山姫子として穏やかに!エレガントに振る舞うだけです!」
まってまって、頭が変になる!
「美羽、ダメだったら、帰っておいで。文字通り無一文生活になるだけなのだよ。ただ、うまくいくなら、戸野家の優希様に可愛がられておいで。」
「お父様・・・。」
「失敬ながら、九條様、お嬢様はもう、輝山姫子様です!行きましょう!姫子様!」
ぐいっと田中が私の腕を引っ張る。
「え、何処へ?」
「頭の回転が鈍いようですね。優希様の元に向かうに決まっておりましょう!」
「いきなり?!」

そして、冒頭の展開になったわけよ。
たしかにね、私も馬鹿だったわ。
そっくりだから、騙せる、騙しとうせ!と言われてできる気になっちゃったんだもの。
田中には大根役者と罵られたけど、もういいんでしょ?私、帰るわよ!
「帰るってどこに?身ぐるみ剥がされて帰る家なんてないんだろう?君も。」
ザクッと胸を抉る少年の声。冬希様、と田中は呼んだ。
「アドリブのきかない大根役者だけど、見込みはあるんじゃない?やけになってたんだろうけど、お兄様が姫子様にキスしたのは初めてのことだし。」
「え、お兄様って、あいつの弟?てか、あんた、何処で見てたの?」
この少年は、確かに部屋にはいなかったのだが。
「ま、確かにそう考えれば有望かもしれませんね。この姫子様で様子をみましょう。」
え、まってまって。
「またあいつに襲われたらどう責任とるってのよ!」
はあ、と田中がため息を吐く。
「本当に足りてないんですね?アドモアゼル。姫子様になりきることに成功するということは、後継を産み育てるところまで当然含まれます。キス如き、通過点ではありませんか。」

は・・・・?
なに言ってんの、この人。
なに言われちゃってんの私。

後継を産む?育てる?
私が、あいつの!?

嘘でしょーーーー!!!!

「やっと、分かってきたんだね、『姫子様になる』ということの重大さをさ♪」
「明日もしっかり、お勤めをお願いします。姫子様」
ニヤリと笑う少年と執事。

私、どうなっちゃうのー?!

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<あとがき>
入院中、夢を見ました。エロ小説を書いてる夢でした。

エロ部分を省けば大体上に書いた内容になります。ここまでドタバダコメディじゃなく、しっとり官能小説風だったんですが、起きて書き起こしてみれば、こんな感じになりました。なんか面白いじゃん?って自分では思ってます。

それにしても、小説書くの久々だわ。がっつり創作するのも久しぶりだな!
もし、よろしければ感想などいただければ、続きも考えます(笑)

それではまた!